BLack†NOBLE


 アリシアも、この二日間は散々酷い目に遭わされてきた。下手をしたら、俺より酷いかもな。


 目の前で惚れた男を撃たれる苦痛なんて、想像するのさえ苦痛だ。茉莉果が撃たれたなら狂い死んでしまうかもしれない。




 ブロンドの髪を優しく撫でてやる。


『蔵人が目覚めた時、そんな酷い顔だと嫌われるぞ。シャワーを浴びて、気分を落ち着かせろ。ついでに、何か食べて来い』


『うん』と頷くが、ウウッと泣き声を漏らしてますます強く抱きついてきた。



『大丈夫だ。アリシア』


 ブロンドの髪からは、まだ血の匂いがする。


『蔵人は、必ず目覚める。そしてアリシアは、もっと酷い目に遭わされるかもな。

 蔵人に愛されていたいなら、それも覚悟しとけよ』


 アリシアは、それに耐えられる心を持っている。

 だから蔵人は、アリシアと適度な距離で傍に置いている。蔵人がここまで自分のテリトリー近寄らせる女は初めて見た。




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