BLack†NOBLE
大きな水路まで歩くとモータークルーザーが用意されていた。
カルロは闇の中で起こる全ての事を見抜いてしまいそうな眼力で、周囲を警戒しながら先にクルーザーに乗り込む。
次に、俺に“来い”と指で合図を出した。
『可愛がられてるな? ムラーノには俺の部下も先に送り込まれてる。安心しろよ、平和ボケした東洋人』
『俺がやらせてるわけじゃない』
『ボスの弟という立場上、おまえがやらせてるようなものだ』
ムカつく奴だ。やたらと突っかかってくる。
数日前に島に渡った時は、それはそれは楽しい気分だったのにな。まさか短期間に二度もこの島に渡るとは思わなかった。
でも、彼女との滞在先をムラーノと選んだには理由がある。この小さな浮島はちょうどいいんだ。
逃げ場も確保しやすい。
『コッグたちは本当に来ると思いますか?』アンドレが、セシルに訊ねた。
『来ない場合、ホテルのラウンジを貸し切りにしてこの弟君と浴びるほど酒でも飲んで騒げばいい』
セシルの高らかな笑い声を『やめろ!』とレイジが咎めた。