BLack†NOBLE
言わせたい奴には言わせておけばいい。船の進路を睨み付けて、黙ってクルーザーの特等席に座った。
『瑠威、コッグたちが姿を見せた途端に銃を乱射する。なるべく袋小路に奴らをおびき出せ』
『カルロ、そんな簡単に言うな。相手も用心してるだろ? 派手な撃ち合いは避ける』
カルロは残念そうにため息を吐き出した。
クルーザーは、あっという間に俺たちを工房の島へ送り届けた。クルーザーから、島に降り立つ。男ばかりの俺たち一団を恐々と見てる奴がたくさんいた。
できるだけ派手に登場すれば、相手の目につきやすいはずだ。
それにしても、人混みに紛れて四方八方をファミリーの連中が右往左往しているのが目につくな。
『おい、レイジ。フィレンツェの屋敷の護衛は手薄になってないだろうな? 見たことある面が沢山いる』
『瑠威様、ご安心ください。万全を尽くしただけです』
『やり辛いな……』と呟き、露店に並ぶベネチアンガラスを見て歩く。大通りは、閑散としている。まだ時間は早いが店仕舞いを始めている店ばかりだ。
『セシル、お前、家族や恋人はいるのか?』
『そんなこと聞いてどうする?』奴は疑わしそうに俺を見た。
『気になったんだよ。質問しちゃいけない掟でもあるのか? でも、ファミリーの質問には誠心誠意答えなきゃならない掟はあるよな』
年齢的には俺と然程大差なさそうなこの男。女の一人や二人いるだろうと思って訊いてみた。
セシルを選んだのは、レイジやカルロよりも面白い話が聞けそうだからだ。
『家族がいる。妻と二歳になる娘が一人』
予想外な答えに大切なものを抱えてマフィアの道を歩んできたのは俺たちの父親だけじゃない。
よく考えれば、当然のことかもしれない。
『家族は、お前の仕事を知っているのか?』
『経営者だと信じているはず。オヤジの会社を継いだと、お袋は誇らし気に俺のことを話す。
お前の常識じゃ、百年かかっても理解できないだろ?
オヤジが引退してからまだ日が浅い。俺は幹部の中では一番新参者だが、この世界の仕組みはよく理解している』