BLack†NOBLE
コッグは、敗北を認めずに歯をギリギリと噛み締める。
『セシル、金を工面してやっただろう? なぜ、そんな奴の味方する』
セシルは、首を左右に降った。
『金は、一過性の物にすぎない。
ご覧の通り、我々の偉大なる方は、常に美しく慈悲と愛に満ちておられる。
この命、かけても惜しくない。最初からそう思ってた』
『セシル……待て……』
蔵人がセシルの肩を掴む。わき腹を押さえて立ち上がった蔵人は、いつもの俊敏さにかけた。
グレコは、ギッと黄色い目を見開くと『ならば、死ね!』 と低く耳障りな声で叫んだ。
─────バァン……
空気が振動して、鼓膜に響く。
人の命を奪うには、あまりに呆気ない音。
血を流さずに終わらせたかった。
二十ミリに満たない鉄屑をセシルは、その身で数発受けた。
俺たちの目の前で、赤黒い血が飛び散った。
ファミリーが一斉に銃を乱射させて、辺りは血の海になる。
『セシル……セシル!? 死ぬなよ! お前が死んだらミラノは誰が守るんだ!』
銃声の中、蔵人の声だけが妙にクリアーに聞こえた。