BLack†NOBLE
彼女は、ベットの上で丸まったまま俺を見上げた。
寝起きの深い二重が、細められた。
「ふふふ、柏原って二重人格よ?」
彼女の手が俺の冷たい頬に伸びて、そして暖める。
「帰るのですか? 帰りたくないのですか?」
「うん。実は、ちょっと帰りたいなぁと思ってたとこなの。
でも、柏原がこっちで暮らすなら私もここにいるわ……でも、でも……」
「一緒に帰りましょう。ご両親も心配されているでしょう。蔵人のことも掻い摘んで説明しないと」
「そうね! そうよね!
そうと決まれば、お腹がすいたわ!」
その手を掴むとキスをして、彼女を抱き起こした。
「そうだと思いました。朝食を用意させてあります。ご一緒にいかがですか?」
朝食の前の、軽い口付けをする。
あまり深く味わうと、甘い香りに酔わされて歯止めが効かなくなるので、ごく軽いキスだ。
彼女の寝起きの甘い香りで、何度頭を狂わされてきたことか……無邪気なようで恐ろしい女だ。
「ええ、食べましょ! 着替えを用意して柏原」
「既に、ご用意してありますよ。お嬢様」
「流石ね!」
彼女の足にルームシューズを履かせると、手を取り、そして微笑む。
これが俺たちの日常だ……