BLack†NOBLE
彼女に続いて蔵人がラウンジに入ると、思い思いの時間を過ごしていたはずのファミリーが皆一様に頭を下げた。
そして偉そうに指図する。
『レイジ、車を用意しろ』
『はい』
蔵人は、ククッと笑った。
彼女は、ニナとジェロと何かを話ている。ニナは彼女に抱き着くと、ワッと泣き声をあげている。
「空港には、レイジだけを行かせる。俺が行くと、やっぱり帰したくなくなりそうだから」
「……なんだよ、それ」
「茉莉果を帰したくない。可愛い奴だ。せっかく仲良くなれたのにな」
「……蔵人にはアリシアがいるだろ」
掴み所がいまいちよく分からない奴だ。俺は蔵人を睨みつけた。
「そうだな」
今日も蔵人は、誰よりも隙のないスーツ姿で……
誰よりも偉そうで……
誰よりもオーラーを放ち……
誰よりも皆に大切にされている。
「またな……蔵人」
「ああ、またな」
また会える。いつでも会える。 俺たちは兄弟だ。