BLack†NOBLE
24.ventiquattro
─────「柏原! すごいわ。皆私たちに頭下げてる!」
彼女は車の窓ガラスにぺたりと張り付いて、見送りの列に嬉しそうに手を振った。
「ねえ、柏原のお兄様って凄い人ね……こんなに沢山使用人がいるなんて、うちのお父様より凄い人だわ」
「凄い、の種類が違う。蔵人の場合、あまり人に褒められるもんじゃない」
「でも、すごいわ。まだ頭下げてるもの……」
細い道を曲がり、屋敷が見えなくなると途端に寂しくなった。
次はいつ会えるんだろう。そもそも、連絡先を交換したわけでもなければ、こっちから蔵人へのアクセスはどうしろって言うんだ。
『レイジ、蔵人は今後のこと何か言ってたか?』
『いいえ、何も伺っておりません』
運転席のレイジは残念そうに答えた。
車は古い街並みを縫うように走る。縦列駐車が連なる、石の道を進んでいく。