BLack†NOBLE
「メルフィス……」
「そうだ。メルフィスだ」
この国の裏事情に精通する者ならば、誰もが恐れる名前だ。
「メルフィスと代理父の契りを交わしたのか?」
「そうだ。メルフィスは、俺の父だ。この屋敷と部下と仕事をくれた……尊敬する唯一の父だ」
蔵人は、ずっと俺達の父親と折りが合わなかった。
だからと言って……
よりによって……
何故、メルフィスと……? まさか、コイツ……
「蔵人────」
怒りを込めた視線も、奴は鼻で笑い受け流す。
「弱いな……本当に、瑠威は弱すぎる。さあ、はやく着替えてこい。出掛けよう」
けれど、俺の「弱さ」と「怒り」を一番に理解して利用してくる。
この場で、コイツが殺せたらいいのに……