BLack†NOBLE
4.quattro
────陶器のバスタブに浸かり、柑橘系のバスソープで体を流す。
鏡で怪我を確認すると、右肩は青く腫れ上がり、わき腹は赤い跡が残っていた。
くそっ……
好き勝手に傷めつけやがって……
この肩と顔では、日本に戻ったとしても執事の業務に支障がでる。可能性の低いことを考えても仕方ないな……しばらくは帰れないだろう。
『瑠威様、着替えをお持ちいたしました』
窓もなければ、排気管に釘が打たれたバスルーム。
予め逃げ道は、全て塞がれている。
唯一の出口は、脱衣所のドアのみ。
俺をあまり信用していない兄は、ライフルをかまえた護衛を二人も用意してくれていた。
『ニナ、タオルをとってくれ』
先程泣かせたばかりの女が、曇りガラスの扉の向こうでビクッと身を震わせた。
濃紺のワンピースの裾が、動きを止める。