BLack†NOBLE
5.cinque
────旅人は、古都フィレンチェを
『屋根の無い美術館のようだ』と表現する。
進化を止めて、修繕と修復に情熱を傾ける街。
でも、その全てが進化を望んでいないわけではない。
大音量で鳴り響く、近代的な音楽。こんな耳障りで騒がしい音を音楽と表現していいのかは疑問だ。
派手な照明は、不規則な回転をしながら暗闇に包まれたホールを照らす。舞台では、裸で狂うように踊る女がスポットライトを浴びていた。
酒……
タバコ……
金……
ギャンブル……
女……
縺れ合う男女に、訳もかわらず連れて来られ売られる少女、それから殴り合う男たち、壊れて崩れ落ちた廃人。
進化をはき違えた若者が、今夜も群れを為して押し寄せる場所。