BLack†NOBLE
「ワールドカップの時は、あの大画面にサッカー中継を写した。すごい盛り上がりだったぞ。スペイン人はみんな追い出してやった」
暗く煙たい空気を掻き分け歩く蔵人。ダンスホールの真ん中を、裂くように進んで行く。
奴のおかげで、人混みが左右に別れて道ができる。
「腹が減っただろ? 瑠威の為に、特別なシェフを連れてきた」
蔵人はそのペースを崩さないが、ホールで思い思いに躍りを楽しんでいた奴等からすればいい迷惑だ。
俺らの後ろには、体格のいい護衛が数名とレイジがついて来ている。
そのために、只者じゃないと判断がつくのか、それとも、奴をクロード・メルフィスと知っているのか。
多分、その両方だろう。
とにかく満員状態のホールを騒然とさせているというのに……
「あの扉の向こうには、もっと広いカジノバーがある。最近、オープンさせたばかりだ」と、涼しい顔をしている。
ここでのバッカスは、蔵人だ。奴は、ここの神であり掟。