BLack†NOBLE
イタリアを離れてからは、ずっと執事として彼女に仕えてきた。
この国に戻ってきたのは久々。
だが、あまり長居したいとも思えないのは、彼女に自分の過去を知られたくないからなのかもしれない。
けれども、耳に馴染んだカンツォーネも、この料理の舌に馴染んだ味付けも、俺の体は、この国の地にとても馴染みを感じている。
「これも、美味しいー!」
「お嬢様、モッツァレラがお気に召しましたか?」
茉莉果お嬢様は、日本でもチーズのたくさんのったピッツァやリゾットを好物とされている。
オムライスなどにも、チーズを入れると大変喜ばれるのだ。
「ええ、お気に召したわ♪ とても美味しいのね~」
「この店は、南イタリアから直送したとても新鮮なモッツァレラを出しているようです。屋敷でも取り寄せましょうか?」
「ふふ……」
彼女は、柔らかく微笑むと小さく頷いた。
不思議に思って、首を傾げると彼女は、また「ふふ」と小さく笑った。