BLack†NOBLE


『アリシア……』


 耳元で名前を囁くと催眠術にかかるように、エメラルドの瞳を閉じた。


 甘いキスを待つ唇……














『するわけないだろ馬鹿女』


『ギャッ!』


 アリシアの右手に握られていた車の鍵を奪い取ると、路上にアリシアを突き飛ばす。


『ヒドッ!』


 なんとでも言え、もうおまえに会うことなんてない。

 自動ロックを解除すると、ハザードランプがオレンジに二回点灯した。

 
 滑るように車内に乗り込もうと……






「……くそっ!!」


 俺の動きは、そこで止まった。


『へっへーん! スリの大国イタリア国民ナメるんじゃないわよ!』


 
 鍵は、長く伸縮性のあるリードのような物で繋がれていた。




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