透明な日々に色を
「どうしたの?まだ寝ぼけてるの?」

お湯を沸かそうとやかんの湯気を見ていた僕に後ろから声が聞こえる

「いや、コーヒーと紅茶どっちがいい?」

「紅茶!ミルクいれてね!お砂糖も!あ!そうだ!」

リビングにある白いイスに座っていた彼女は勢いよく立ちあがり、イスの横に置いた
大きめのボストンバッグをまさにさばくるという感じでガサガサとなにかを探している

「あった!」

そう言って立ち上がり、僕の元へ持ってきたものは外は赤く、中は白い、シンプルなマグカップ

「これから私にはこのカップで紅茶をいれてね」

ぐいっとより近づける。

「いいけどこれからって?」

カップを受けとりながら聞くと、同時にやかんがピューっと鳴り出した

「さっき言ったでしょ?しばらく置いてって!」

「え?なにを?」

きっと僕は目を見開いていたんだろう

彼女は僕の真似をするように目を見開いて僕の目をじっと見つめ、

「わたしを」

そう言って、見開いた目を戻し白いイスに座り直す

「は?」

「お湯沸いてるよ」

テーブルに腕をかけ、ずっとかわらない口角をあげた顔で話す

ピューっと鳴ってるやかんの音なんて気にならないくらい僕の思考回路は遮断されてしまったようだ

< 2 / 9 >

この作品をシェア

pagetop