透明な日々に色を
「まぁ昔の事はいいじゃん!飲も飲も!」
飲み干したグラスを置き、新しく赤ワインをあける。
今度はホブノブカベルネソーヴィニョンだ。
「私、このワイン大好きなんだ」
と話題をそらすかの様に手際よくワインをあけたっぷりと注いでいく
ナナセが話題をそらすなんてなんて珍しい
昔の話をしててもなんでも食いついてきたのに
まぁ人間嫌な事は忘れちゃうのかも
「そうだ!そういえばナナセが拾って帰った猫!元気か?!」
「え?」
まだワインが半分くらい入っているグラスを持ったまま僕を見る
「あの白い猫!拾ったとき汚れてて白なんて気づかなかったけどね。」
「リリはまだ元気だよ!一時期いなくなっちゃったんだけどしばらくしたら戻ってきて。お姉ちゃんと一緒にビラ作ったりして探したんだけどいつの間にかひょいっと帰ってきてね・・・」
ワイングラスを揺らしながら話す彼女はワインを見つめてるが決して見えてるのはワインではなくリリ。猫の姿だろう
「元気ならよかった!お姉さん居るなんて初耳だな。」
「あ・・・うん。家は三人姉妹なんだ。」
「そうなんだ。めっちゃかわいい妹いるんだろ!今度会わせてよ!」
昔、ナナセが妹自慢ばかりしてたのを思い出した。お約束の質問すぎたかな?
「ばか!だめだよ!絶対!」
予想以上にむきになって怒っている
「ごめんごめん!冗談だよ!さてさて、明日仕事だしそろそろ寝るか!」
そう言って立ち上がろうと立ち上がろうとしたところ
「なにいってんの?!まだワインあけたばっかだよ!まだまだ寝かさないからね!」
「え?!」
この強引さも10年の間に備わったのだろうか。夜は長そうだ