先生と教官室2〜新しい道〜
「進藤先生が恵那に気持ちを言えないのは、私が感じてるような不安があるからなのかな…。」
自分が感じた不安を話した後にそう付け足すと、先生は少し笑ってから私の横に座った。
そして、そっと私の手に先生の手が重なった。
「大人になると、一つの決断がとても重くなる。失敗する事は人生を失敗する事に繋がるんだ。」
少し遠い目でそう呟いた先生は、手を握る力を強めながら話し続けた。
「きっと進藤先生は、自分の事より横井の事を気遣って踏みとどまってるんだと思うよ。」
「恵那の事を…?」
「俺だって迷いがない訳じゃない。伊緒とこのまま付き合ってていいのかと思う時がある。俺達は関係を持ってはいけない立場同士だから…。」
「あ……」
好きだけじゃ乗り越えられない大きな壁。
『立場』というものは決して変える事はできないものだから…。
「それに、進藤先生も横井も初めての体験だから、まだ慣れてないんだよ。だから大丈夫!!時間が解決してくれるよ。」
先生の言葉は力強い。
説得力もあるし、まるで御守りのようだね。