先生と教官室2〜新しい道〜
不器用な先生
コンコンッ
午前の部終了後、教官室のソファーで寝転がっていると誰かがドアをノックした。
「はーいって、おぉどうした?」
「甲田先生…。」
ドアを開けると、そこにはさっきの男子生徒の姿があった。
転んだせいかティーシャツがそこらじゅう砂だらけだ。
「さっきは…ほんと、ありがとうございました。」
顔を赤くしながら俺に頭を下げるこいつが可愛くて、なんだか胸の奥がジーンとする。
きっと、俺の所にくるのめちゃくちゃ勇気いったよな。
でもきちんと伝えにきてくれて…お前めちゃくちゃ良い奴だな。
「ちょっと待ってろ。」
「え…?」
普段はこんな事しないけど、今日だけは特別に。
教官室の中に入っていき、冷蔵庫からオレンジジュースの紙パックを取り出した。
「俺こそ運んでくれてありがとなっ!!これご褒美!!」
「!!!!…でも、先生は…」
「はい終わり!!もう今回の事はこのジュースで貸し借りなしなっ。だから俺が足つった事も忘れてくれよ?」
「……ふはっ、了解っす。ごちそう様です。」
「おぅ、じゃーな!!」
それから俺に失礼しますと頭を下げてから、男子生徒は友達の所へと走っていった。
片手に俺が上げたオレンジジュースを持ち、友達と楽しそうに笑いながら歩いていった姿を見て、すごく安心した。
楽しいはずの体育祭が嫌な思い出で終わらなくてよかった。
あの笑顔なら、あいつはもう大丈夫そうだな。