先生と教官室2〜新しい道〜
「あ………」
安心した瞬間、一粒だけ涙が頬を伝った。
背後にいるから先生にはバレていないだろうと、急いでそれを拭った。
「行くぞ、伊緒。」
「え…あ…」
先生が握っている手とは逆の手にある、マグカップ。
どんなことが起きても離さなかったけど、置いていかないと駄目だよね。
先生怒ってるし、もうマグカップどころじゃないだろうし。
「…待ってください、マグカップ…返してきますから。」
握られている手を離そうと力をいれる。
すると、それを拒むように先生は私より力をいれた。
「別に返さなくていい。お前が俺の為に選んでくれたものだろ。」
「でも…」
「話しは後だ。とりあえず会計済ませるぞ。」
「…はい。」
私の手から離れたマグカップは、先生の右手へとおさまっていく。
あのマグカップを見つけた時から、この姿を見たかったはずなのに。
なのに、今は申し訳無い気持ちが大きくて先生がみれないよ…。