先生と教官室2〜新しい道〜





「ありがとうございました。」





会計を終えたマグカップは、白い小さな箱にいれられていた。





紺色のマグカップとは正反対のその色が、やけに寂しく思える。





まるで、色あせてしまったように。






結局、お金も先生が払ってくれた。






自分で使うものだから、と言って私の手を遮った先生。






その時の目は、とても冷たかった。







「…………っっ」







どうしたらいいんだろう。






何て言っていいのか解らないよ。







先生は、会計をしてから一言も話してくれないまま。







ただひたすら私の手を引っ張って何処かに向かって歩いている。







バレないように流している涙だって、いつもならエスパーのように気づいてくれる。







笑って、大丈夫だって抱きしめてくれるの。







全身で温もりをくれるんだ。








でも今は、握られている手からも先生の温もりが伝わってこないよ…。










< 270 / 379 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop