先生と教官室2〜新しい道〜
「なぁ伊緒、何があった?」
あれから地下の駐車場へ着いた私達は、人気のないベンチに座っている。
先生は手を繋いだまま、私が居る方とは逆を見ている。
「…そのマグカップ、棚の一番上にあったんです。最初は自分で取ろうとしてたんですけど全然取れなくて。そしたら、さっきの人が取ってくれたんです。」
「うん。で、なんでああなるわけ?」
「それは…急に引っ張られてバランスが崩れて…」
「んで抱きしめられたのか?見ず知らずの奴に。」
「―――――っっ!!!」
なんで…なんで私がこんなに攻められなきゃいけないの?
嫌だったのに、辛かったのに。
先生に早く助けて欲しかったのに。
どうしてそんなに冷たい目や態度をするの?
「…私が、全部…悪いんです、か?」
「え?」
「元はといえば、先生が私を一人にしたからこうなったんじゃないですかっ!!
…ずっと、ずっと待ってたのに戻ってこなくて、寂しくて…なのに…っく…」
「伊緒…あのな…」
「もう先生なんか知りませんっ!!」
「おいっ?!!伊緒っっ!!」
繋がれていた手を思い切り振り払い、先生の前から走って逃げ出した。
流れる涙は汗とまじり、私の上がっている体温を冷まそうとする。
不意に逃げ出した私に驚いた先生は、後ろからずっと私の名前を呼んでいた。