先生と教官室2〜新しい道〜
「伊緒ちゃんの事すごーく好きなのね、彼は。」
「え?」
携帯を握りしめたまま固まっていた私を、志帆さんが笑いながら見ていた。
何か作ろうとしているのか、器用にりんごを剥きながら。
「きっと自分のものをとられた気分になったんじゃないかしら。」
「自分のもの…?」
「ふふ、まだ子供なのねぇ。他の男の人に伊緒ちゃんを触られて嫉妬したのよ。ね、あなた。」
「はははっ、そうだろうなぁ。」
自分の顔が熱くなっていくのを感じる。
二人が話す内容は本当かどうか解らない。
ただの空想かもしれない。
でも、もしそれが本当だったら…。
いつも余裕があって大人な先生が、私のことであんなに取り乱していたとしたら、それはどんなに嬉しい事なんだろう。
先生は私に怒ったんじゃなくて、私の為に怒っていたのかな…?
「まだ二人とも素直になるのが苦手なのね。」
「…そうかもしれません。」