先生と教官室2〜新しい道〜
りんごと砂糖の甘い香り。
それは始めての香りなのに、何故か懐かしい気持ちにさせる。
「いい匂い…」
「ふふ、そうでしょ?」
座っていたカウンターから離れ、少し奥にある席に座る。
カウンターとはまた違う雰囲気で、暗めの照明がなんとも言えない。
「そこ、気に入った?」
「はい。一番落ち着きます…。」
「そう…。」
話しをする間も濃くなる甘い香り。
「………せ…んせ…」
その甘さが、不思議と先生と重なる。
りんごを煮る志帆さんの姿を見てから、ゆっくりと目を閉じる。
店内から溢れ出る安心感や温もりをもっと深く感じたくて。
始めて来たとは思えない、落ち着く店…。
また来たいなぁ。
出来ることなら、今度は先生と二人で。
「あら、伊緒ちゃん?」
甘いりんごの香りと、志帆さんの笑顔が遠くなるのを感じた。