先生と教官室2〜新しい道〜
開いた口が塞がらない。
恵那も私も一瞬時が止まったかのように固まっていた。
今、先生なんて…。
「ふふふっ、それは大変ね。夫と準備しておくわ。」
「はいっ、宜しくお願いします。」
笑いあう二人とは真逆に涙でいっぱいの私。
目は勿論、頬も手も何もかもが濡れている。
「伊緒、行こっか。」
「恵那……」
私に寄り添うように座っている恵那が、頭を撫でる。
目を合わせると、恵那の頬にも涙が流れていた。
本当に優しいね、恵那。
自分の事じゃないのに一緒のように喜んでくれるなんて。
「いおーっ、先生いらっしゃったわよー!!」
会話が終わったのか、下からお母さんの大きな声が響いてきた。
「ほら、呼んでる。」
「うんっ」
溢れる涙をしっかり服で拭い、立ち上がる。
その姿を見てから、恵那も立ち上がる。
顔を見合わせ少し笑いあってから二人でゆっくりと階段を降りた。
「恵那、大好き。」
「えー?先生より?」
「え、うーん…」
「あははっ、何それ!!」
だって、比べられないよ。
恵那も先生も、二人とも私にはかけがえのない存在で大好きなんだもん。
ずっとずっと一緒にいたい人達なんだよ…。