先生と教官室2〜新しい道〜




寝室に戻り、服へと手をのばす。





さっきまでは楽なジャージにしようと思っていたけど、先生の姿が気になって別のものにした。






黒がベースの水玉柄シャツに、薄ピンクのショートパンツ。






今日の先生に合うような落ち着いたコーディネート。






服を着替え、洗面所で顔を洗ってからキッチンへと向かう。






すると、一歩近づくごとにいい匂いが鼻をかすめた。






「お、着替えたな。」






「…はい。」







話し方も接し方も何もかもいつもと変わらない。





なのに、何でこんなにも不安な気持ちがするんだろう。






「じゃあ食べるか。おいで、伊緒。」






扉の近くに立ち尽くしている私に先生が手招きをする。






それに吸い込まれていくように近づくと、テーブルの上の料理が目に入った。






「…これ、先生が?」






向かい合うように置かれているのは、色鮮やかな黄色と赤のオムライス。





前に私が先生に作ってあげた事のある思い出の料理なんだ。






「何か、急に食べたくなってさ。伊緒のには負けるけど一応食えるぞ。」





「ふふっ、本当ですか?」





「本当だよっ!!」






食べ物の事になると少し子供っぽくなる先生。





私の言葉にムキになりながらオムライスを頬張る姿がまた子供っぽくて可愛い。






用意されているスプーンでオムライスを口に入れる。






少し大きめに切られた具材が男の人の料理って感じがする。







「何ニヤツいてんだ?」






「いや、美味しいなぁーって。」








人に作って貰った料理って特別美味しく感じるんだよね。






自分で作ったものでは感じられない幸せな気持ちが溢れてくるようで…。





それに、同じ料理なのに作る人によって味が変わるのが面白い。







朝ご飯を食べていないからか、私も先生もお皿一杯のオムライスをあっという間に食べ終えてしまった。










< 326 / 379 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop