先生と教官室2〜新しい道〜
「今日は俺にとって特別な日なんだ。忘れたくても忘れられない、そんな日…。」
ゆっくりと話し始めた先生の手が、震えているように見えた。
表情にも、さっきの寂しい目が浮かんでいる。
その姿はいつもの先生とは全く違って弱々しく、心が張り裂けそうになる。
「なぁ伊緒、今から行きたい所があるんだけどついてきてくれる?」
「…もちろんです。」
「ははっ、そうだろうなぁ。ちゃんと服合わせてくれてるし。」
「っっ!!!!!」
私の考えがすべてバレているではないか。
見ていないと思っていたのに、実際はよく見てるなぁ…。
「その場所についたら話すよ。何もかも全部。」
「はい。」
人の気持ちを聞く事は決して簡単なものではない。
まして、受け止める事はもっと難しい。
でも、どれだけ小さな力でもいいから先生の力になりたい。
だから、先生の話しがどんな内容だって、最後までちゃんと聞くよ。
絶対に受け止めてみせるから。
コップに残っていたコーヒーとココアを全て飲み干し、二人とも席をたった。