先生と教官室2〜新しい道〜






見た瞬間の衝撃は二人とも同じ位で、少しの間声が出なかった。






「秋山先生…ですよね。」





何でここに…?






どうしたらいいのか解らず隣にいる先生を見てみると、さっきみた寂しい目をしている姿が目に入った。






「なんで…今日くるんだよ…」





「…せんせ?」






なんだか私より動揺しているみたい。






もしかして、その寂しい目の原因は秋山先生と関係があるの?







「…伊緒、靴持って寝室にいてくれる?」







「え…。」








「大丈夫、前みたいな話しにはならないから。少しの間待ってて。」







「…はい。」







まだ先生と付き合う前に起きた小さな事件。






教官室で先生と秋山先生が結婚の話しをしているのを聞いてしまい、沢山泣いたことがあった。







秋山先生が無理矢理話しを進めていただけなんだけど、私はそれを知らなくて先生を信じる事が出来なかった。







裏切られた気持ちが大きくて、凄く怖かったのを今でも覚えている。






でも、今はそんな私の気持ちなんてどうでもいいんだ。






先生を信じてるし、二人に何の関係が無いことも解ってるから。







私が先生と秋山先生が会ってほしくないと思う理由は、先生が心配だからなんだよ。






そんなに寂しい目をするのは、それだけ辛いって事でしょ?






秋山先生と会う事で先生が壊れてしまいそうで凄く不安なんだ。







「…ほら、行くぞ。」






私に安心しろと言うように、先生は少し笑った。






玄関までゆっくりと歩き私に靴を渡すと、先生はそのままドアノブに手をかけた。






どんな話しをするんだろう。







秋山先生は何の目的でここに来たの?






突然の出来事に、色々な気持ちが頭を駆け巡っていく。







静かな部屋でただ枕を抱き締めながら、玄関の会話に耳を澄ました。









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