先生と教官室2〜新しい道〜
冷たい目が更に冷たくなった気がした。
真っ直ぐに俺の目を見る姿からは、憎しみと似たようなものが伝わってくる。
秋山先生は自分の都合で子供を産まないと決め、その為に俺に嘘までついた。
そのはずなのに、何でこんなにも悲しそうなんだ?
「…甲田先生。私、今から公園に花をお供えに行こうと思ってるんです。」
「え……」
「一緒に、行ってくれますよね?」
産まれる前に消してしまった小さな命。
その命に墓を作ってやる事はできなくて、まともな事は何一つしてやれていなかった。
だから、秋山先生が公園に花を供えに行くように、俺も違う場所に花を供えに行っていた。
今日も今から行こうと思っていたんだけど…。
「甲田先生?どうしたんです?」
秋山先生の右手には向日葵の花束が握りしめられている。
夏の暑い日にピッタリな黄色の鮮やかさ。
本当は、一緒に行った方がいいのかもしれない。
二人で手を合わせて謝る事が一番正しいようにも思える。
「…すいません、俺は遠慮しときます。」
だが、それは失うものが無かったらの話し。
守るべきものも何もない、一人だったらの選択なんだ。
「なんで…何でですか?!!」
「俺は俺で決めてる場所がありますから。秋山先生とは行けません。」
「ーっっ!!」
俺の過去の事で、これ以上伊緒を悩ませることはしたくない。
今も不安で一杯なはずなのに、この上一人になんか出来るわけがない。
それに、伊緒と二人で花を供えに行きたいんだ。