先生と教官室2〜新しい道〜
「あなたが一緒に行く相手は俺じゃない。」
一筋だった涙が無数に増えていく。
「幸輔ともう一度話して下さい。あの時の事ももう一度謝るべきです。」
「……そう、ですね。グスッ」
秋山先生の行為にショックを受けた幸輔は、あの時逢うこともせずに別れを告げた。
大学生といえど大人にはなりきれていなく、命の重さを始めて知った俺達はただ漠然として受け入れる事ができなかったんだ。
「もう二度と同じことを繰り返さないように。約束してください。」
「…もちろんです。」
頬を涙で濡らした秋山先生が、少しだけ微笑んだ。
この人の歯車はどこで崩れてしまったのだろう。
昔はこんな性格の人ではなかったんだ。
俺の友達が選らんだ大切な人。
本当はさっきのように優しく微笑む、暖かい人なんだ。
「私、今から幸輔君のところに行ってみようと思います。会ってもらえないかもしれないけど、話しがしたい。」
「ははっ大丈夫ですよ。あいつなら会ってくれます。」
「…そうですね。優しい人ですから。」
昔の秋山先生に戻っている気がした。
楽しく過ごしていた、昔の秋山先生に…。
こんな風になれるなら、もっと早くに向き合えばよかった。
逃げずに真正面から。
そうすれば、俺も秋山先生も、それから幸輔も伊緒も傷つく事はなかったんだ。