先生と教官室2〜新しい道〜
蒸し暑い外から、少し涼しい玄関へ。
「あ…れ…?」
すると、さっきまで気を張り続けていたからか急に身体の力が抜けていった。
身体はまるで鉛のように重く、力が抜けた足では支える事などままならない。
ズルズルとドアにもたれながらその場にしゃがみ込んだ。
『あの子はあなたと私が殺したの!!』
『たとえ生まれる前でも小さな命を奪った犯罪…』
動かない身体とは反対にフル回転している頭には、さっきの秋山先生の言葉が響き続けていく。
あの時、電話の音で聞くことはなかったが、秋山先生が言いかけた言葉は嫌でも解る。
『小さな命を奪った犯罪者』
そう言おうとしてたんだ。
「―――っっ」
震える身体がまるで心を表しているようだ。
考えたくなくても無意識に浮かんでくる言葉はぐるぐると回り続けて終わりがない。
生まれるはずの命を奪った。
あるはずの未来を奪った。
見ないようにしていた事実が次々と降りかかってくる。
過去を引きずる事はよくないと言ったのは俺なのに、一番引きずっているのはその俺じゃないか…。
その場に立ち止まったままで、一歩も前に進めないまま。
一体俺は今まで何をして……
「先生っっ!!!!!」