先生と教官室2〜新しい道〜
何年か前の今日は、一つの命が消えた悲しい日。
その命に花を供えに来た事は決して楽しい思い出じゃない。
けど、先生の涙を初めて見て、本当の傷の深さを知れた大切な思い出。
昔の事だから今は大丈夫、というのは間違いで。
心についてしまった傷はどれだけ時が経っても消える事はなくて、大丈夫なんて考えはただの強がりだった。
埋まることのない傷は、少しずつ浅くしていくしかないんだよね…。
「伊緒、もう一回…」
「ん……」
私が先生の傷を治してあげる事は出来ない。
でも、今日みたいに一緒に居る事はできる。
少しでも先生の傷を浅くできるように、頑張って支えるよ。
目を閉じて見えなくても、頭の中にはしっかりと空と海の輝きが残っている。
きっと、今日の事は私達にとって忘れられないものになる。
二人の絆を強くしてくれた、そんな大切な思い出に。