先生と教官室2〜新しい道〜







「…片瀬、それ本気か?」






「え?」








ソファーに座っていた先生が、私へと近づいてくる。








真剣な顔のまま、ゆっくりと。








そして、私の前に先生が立ち少し下を見た瞬間、もう一度目と目が合った。








「俺は教師だし、お前より10も年上だ。忘れられないほど重い過去だってある。お前が求めている事はしてやれないと思うぞ。


…それでも片瀬は、好きなのか?」







180㎝を超える先生の身長と、160㎝にも満たない私の身長。







30㎝近くもあるその身長差は、手を伸ばしても届かない。







目の前にいるというのに、何でこんなにも遠くに感じるのだろう…。








「……先生。」








身体の横に力なくおろしていた手を、先生へと伸ばす。








顔には届きそうにないので、服の裾を小さく握った。








「私は、ただ先生の隣に居たい。したくないと言ったら嘘になるけど、普通の恋人がするような事を求めている訳じゃないです。」









「…片瀬。」








「それに、年の差があっても、重い過去があっても、私の気持ちは変わりません。先生が好きです。大好きです。私が辛かった時に支えてくれた先生のように、私も先生を支えたい。もう、遠くにいるのは嫌です。少しでもいいから先生に近づきたい…それだけなんです……」








話していく内に、服の裾を握る手に力がこもっていた。











< 361 / 379 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop