先生と教官室2〜新しい道〜
「…片瀬、それ本気か?」
「え?」
ソファーに座っていた先生が、私へと近づいてくる。
真剣な顔のまま、ゆっくりと。
そして、私の前に先生が立ち少し下を見た瞬間、もう一度目と目が合った。
「俺は教師だし、お前より10も年上だ。忘れられないほど重い過去だってある。お前が求めている事はしてやれないと思うぞ。
…それでも片瀬は、好きなのか?」
180㎝を超える先生の身長と、160㎝にも満たない私の身長。
30㎝近くもあるその身長差は、手を伸ばしても届かない。
目の前にいるというのに、何でこんなにも遠くに感じるのだろう…。
「……先生。」
身体の横に力なくおろしていた手を、先生へと伸ばす。
顔には届きそうにないので、服の裾を小さく握った。
「私は、ただ先生の隣に居たい。したくないと言ったら嘘になるけど、普通の恋人がするような事を求めている訳じゃないです。」
「…片瀬。」
「それに、年の差があっても、重い過去があっても、私の気持ちは変わりません。先生が好きです。大好きです。私が辛かった時に支えてくれた先生のように、私も先生を支えたい。もう、遠くにいるのは嫌です。少しでもいいから先生に近づきたい…それだけなんです……」
話していく内に、服の裾を握る手に力がこもっていた。