解ける螺旋
怖い、と思うのに。


先生は危険な人だから、近付かない方がいいはずなんだ。
これ以上先生を知ろうとしちゃいけない。
踏み込んでは危険なんだとわかっているのに。
それでも知りたいと思うのは、今まさに私自身が一番気になっているからだってわかる。


だから怖いと思っても、先生が何を秘めているのかを確かめる必要があると思った。
先生はあまりにも謎が多い。
何を目的にした行動なのかがわからない。
先生に言われる言葉も、難解過ぎてよくわからない。


あんな事をしたのは先生の方なのに、私に興味はないって言った。
それならどうしてあんなキスをしたんだと言いたい。
たとえただの気まぐれでも、あんな深いキスをされたら割り切れない。


何の事だかわからないけれど、必然に迫られたとも言っていた。
面白いデータと言う言葉も気になる。


そうやって一つ一つ先生が残す全てのパーツに注意を向けてみたら、先生の言動はあまりに不可解だった。


そして、少なくとも、先生は私に好意を持ってあんなキスをしたんじゃない。


それは重々承知だけど、改めて自覚するとあまりに酷い。
あのキスを拒まなかった私の心を嘲笑っていたのかもしれないと思ったら、夢中になっていた自分が恥ずかしい。悲しい。


心の無いキス。
そんなものを見られて、健太郎に『失恋』したんだと思うと、割り切れない想いでいっぱいになった。
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