解ける螺旋
◇
「……珍しいね。今日は一人?」
テーブルの上の手をグッと握り締めた時声を掛けられて、私は思わずビクッと身体を震わせた。
少し昼食の時間を過ぎた学食。
ほとんど手付かずだったランチのトレーを前にした私の正面に、樫本先生が持っていた参考書をテーブルに置きながら座った。
ずっと考えていた人のその姿を見て、私は息を飲んで樫本先生の仕草を見守ってしまう。
「遅いランチだね。全然進んでないみたいだけど。
……今日は結城君はどうしたの?」
当たり前の様に健太郎の名を口にする先生に、どうしようもなく憤りを感じた。
どうしてそれを先生が聞くの?
知ってるくせに。わかってるくせに。
だけどそう口にしてしまうのは悔しくて、私は視線を上げないままで静かに答えた。
「失恋した相手と向き合ってランチ出来るほど、私もお目出度い人間じゃないんです」
「……失恋?」
樫本先生が微かに眉を寄せた。
その表情に確かな不機嫌を感じて、私は少しだけ怯む。
感情が読めない、とは思っていたけれど、今までも今日も、負の感情だけは強く感じられる。
そしてそんな先生だから、意味不明な人なのに、人間らしいとすら思う。
「君、結城君が好きだったの? また?」
「は? ……また、って、一体何を……」
機嫌の悪い先生を怖いと思いながら、言われた言葉の不可解さに問い返した。
「答えろ。今度はいつから好きだったの?
なんで失恋したって言うの」
それなのに先生はそんな事を聞く。
「……珍しいね。今日は一人?」
テーブルの上の手をグッと握り締めた時声を掛けられて、私は思わずビクッと身体を震わせた。
少し昼食の時間を過ぎた学食。
ほとんど手付かずだったランチのトレーを前にした私の正面に、樫本先生が持っていた参考書をテーブルに置きながら座った。
ずっと考えていた人のその姿を見て、私は息を飲んで樫本先生の仕草を見守ってしまう。
「遅いランチだね。全然進んでないみたいだけど。
……今日は結城君はどうしたの?」
当たり前の様に健太郎の名を口にする先生に、どうしようもなく憤りを感じた。
どうしてそれを先生が聞くの?
知ってるくせに。わかってるくせに。
だけどそう口にしてしまうのは悔しくて、私は視線を上げないままで静かに答えた。
「失恋した相手と向き合ってランチ出来るほど、私もお目出度い人間じゃないんです」
「……失恋?」
樫本先生が微かに眉を寄せた。
その表情に確かな不機嫌を感じて、私は少しだけ怯む。
感情が読めない、とは思っていたけれど、今までも今日も、負の感情だけは強く感じられる。
そしてそんな先生だから、意味不明な人なのに、人間らしいとすら思う。
「君、結城君が好きだったの? また?」
「は? ……また、って、一体何を……」
機嫌の悪い先生を怖いと思いながら、言われた言葉の不可解さに問い返した。
「答えろ。今度はいつから好きだったの?
なんで失恋したって言うの」
それなのに先生はそんな事を聞く。