解ける螺旋
なんでそんな事を言い切れるんだろう。
何が私の本能の行動だと言うんだろう。


その言葉の意味に踏み込もうとして、心の奥底の何かが私を止めた。
答えに辿り着くのを阻む様に。


「違う! そんなはずない!
……先生はそうやって私を惑わしてるだけで……!」

「惑わされる君が悪い」

「……絶対違う……!」


顔を背けて、声が枯れる位に叫んだ。


だってわからない。
最初は好意もあったかもしれないけど。
確かに気になってはいたけれど。
私は今、ただ先生が怖かった。


初めは漠然とした不安。
そして最近になって見るようになった悪夢。
私の身の回りで起こる、あまりに不自然な事故。


その合間合間で、私は自分の経験していないはずの『危険』を感じた。
そして怯える私に向けられる、先生の冷たい視線。


その瞳が今、私を見つめている。
ただ真っ直ぐ射抜く様に。
そして私はその瞳の奥に、どうしてだかわからない強い殺気すら感じている。


「じゃあ、もう一度実感してみろ。
君は何をされても俺を受け入れる。抵抗出来るはずがない。
それが今の君の心なんだから。
……でも、もし抵抗出来たら、結城君の元に返してあげるよ。
俺から昨日の事を弁解して取り持ってやってもいい。
……ありえないけど」


そう言って。
反射的に腕から逃れようとする前に、先生が私の胸をグッと掴んだ。


「痛っ……!!」


思わずギュッと目を閉じた。
ピリピリと感じる、痛みとは違う感覚が、脳まで伝わって来る。
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