解ける螺旋
天使の様だと思っていた綺麗な顔が、情欲を孕んで妖艶に見える。
そこに樫本先生の感情を見付けて、私は息を荒げてただ魅入ってしまう。


「……結構そそる顔するね。
そういうの自分では自覚してる?」


そんなことを言いながら嘲笑されたら、ほら見ろ、と言われている様な気がして、屈辱にも近い敗北感を覚えた。


「違う……そんな顔してないっ……!」


だから、必死に顔を背けた。


イラ立つような先生の手で中途半端に服を乱されて、私の肌が外気に触れる。
空気のあまりの冷たさに身を震わせた。
私は自分の意志に反して、この間と同じ様に、温もりを求めて先生の背中に腕を回していた。


「これでも無自覚? ……性質が悪いな」


身体が密着して、先生が唇に深いキスを落とす。
それを望む様に、私の手は先生の背中にしっかりとしがみついていて、自分で自分の行動を見ていられない。


そして唇が離れて、先生が私を見つめたまま意地悪に笑った。


「ふう……。ちょっと脅かすだけのつもりだったんだけど……。ま、いっか。
奈月、君さ。自分が俺を煽ったんだって事、ちゃんと認めておきなよ」

「だから、私は……!!」


反論しようとした途端に、身体が大きく震えた。
あまりの恥ずかしさで必死に両手で顔を覆う。


見ないで。こんな私、私じゃない。


そう叫びたいのに、全身から感じる甘い刺激に、まともに呼吸を繰り返す事も出来ない。
私は望んでない、と必死に言い聞かせても、私の身体は反応する。


それを全部、先生は見抜いてる。
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