解ける螺旋
その後、どうやって先生から逃げ出したかは覚えていない。


先生との事を思い出す度に心は叫び声を上げる。
なのに身体は熱くなる。


そんな自分を掻き消してしまいたいと思う位、激しい嫌悪感に襲われる。
だけど、心を制御出来ない。
誰にも言えない焦りを必死に押し隠して、私は自分の気持ちに答えを探そうと足掻く。


こんな自分を知られたくなくて、大学には行っても研究室のドアを開ける事は出来なかった。
そのうち、研究室に向かう事も出来なくなった。
そして気が付くと、私は二週間近い日々、研究から遠ざかっていた。


携帯には何件ものメールや電話の着信履歴が残っている。
その多くは健太郎からで、論文が進まないと怒る文章だったり、身体の調子を心配する文章だったり。
とにかく研究室に顔を出せと宥める文章だったり。
一番最近の留守電には、どうしたんだよ、と困った声が残されていた。


それを聞いて溜め息をつきながら、すごく迷惑を掛けてるな、って心が痛んだ。


だけど。
行けない。


だってどんな顔して先生に会えばいいのかわからない。
会って何を言えばいいのか、どんな目を向ければいいのか。


それよりも私がどんな想いをするのか。
< 119 / 301 >

この作品をシェア

pagetop