解ける螺旋
だけど若い彼は、命を絶った学者とは違った。


目指した目標と別の方法で、望みを叶える術を模索した。


そして数年。
彼は奇跡とも言える実験に成功した。
世間に公表する気はなかった。



大発明だ。


これまでのどんな研究も理論も、根底から覆す事の出来る研究だとわかっていても、それは彼にとって何の意味も無かった。
彼にとっては、自分の望みを叶える為だけに必要な手段でしかなかったのだから。


旅立つ前に彼は自分の心に誓った。


何十回、何百回失敗しても。
誰を苦しめ誰を泣かせ、そして誰かを殺してでも。
この世界に望む未来が訪れるのなら、何も躊躇はしない。


怯む必要はない。
こんな世界など、無意味な物でしかないんだから――


そうして彼は孤独を覚悟して。


ただ一人、『観測者』となる。
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