解ける螺旋
健太郎に迷惑を掛けてる。
そう意識して、やっとまともな思考が戻って来た様な気がした。
同時に先生にされた事が鮮明に脳裏に蘇って、何よりも恥ずかしさでいっぱいになる。
そんな自分に泣きそうにもなった。


先生が私にした事はあまりに酷いって思う。
だから怒ってるし、先生を怖いって思う。
だけどなんであんな事になったのかわからず、先生がどういうつもりでいるのか掴めない。


先生が私を好きな訳がない。
もし少しでも気持ちがあるなら、あんな酷い事はしないと思う。
そしてそう考えると、自分の中で何かが悲鳴を上げているのに気付く。
先生に会うと、今よりも心が痛むのがわかるから、私は研究室に近付く事も出来ないでいる。
健太郎に迷惑を掛けてる事をわかっていながら。


だけど研究室に足を向けられない原因はそれだけじゃない。


自分自身への嫌悪感と羞恥。


『君が好きなのは俺だ』と言われた。
健太郎を好きだったと言い張る私に、先生はまるで私の心をコントロールするみたいに言い放った。


違うと頑なに否定した。
そんな事ない、ありえないと。


そう言ったのに、私は止めてって言えなかった。
身体を突き飛ばして逃げ出す事も出来なかった。
それどころか、先生の愛撫に喘いで、その身体にしがみついた。


全てが自分自身を否定する行動。
私が言った言葉はどれも、意地を張った嘘にしかならなかった。
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