解ける螺旋
だけど。
先生は健太郎に肩を掴まれて、不機嫌そうに眉を寄せるだけ。


「それがなんで僕のせい?」

「……アイツ、大学には来てるんだ。
なのに、研究室だけに来ない。
先生が関係してる事位、わかるに決まってる」


健太郎がそう言い募ると、先生はいっそう眉をひそめて、肩の手を払い除けた。


「だからなんでそう言い切れるの」


イライラした声。
背を向けて歩き出そうとする先生の前に、健太郎は通せんぼでもするみたいに回り込んだ。


「なんで、って……。
だって先生、奈月にキスしてたじゃないか!
先生と何かあったからに決まってるだろ?」


健太郎が周りを気にして小さく叫んだ言葉に、私の方がドキッとした。
先生はチラッと健太郎を見て、ああ、あれか、とつまらなそうに呟く。


「……そう言えば見られたっけ。
で、それに僕がどう関係あるの?
相沢さんは嫌がってたんじゃないし、そんなに騒ぐ事?」


先生は面倒臭そうに溜め息をついて、髪を掻き上げながら健太郎に向き合った。


「……って。
先生、奈月の事好きなんじゃないの?
なら、どういうつもりでアイツに……!」


そう叫んだ健太郎に、先生は蔑む様な視線を向けた。


「好きじゃなくてもキス位誰とだって出来る。
それ以上も。……君も男だからわかるだろ」


先生の冷たく乾いた声に、ズキンと胸が痛むのを感じた。
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