解ける螺旋
◇
研究室の前に立ち尽くして、私は大きく深呼吸をした。
いつまでも研究から離れてる訳にはいかない。
ここに来ない訳にもいかない。
樫本先生とどんな顔をして会えばいいのかわからない、なんて、そんな私情で、健太郎に迷惑を掛け続ける訳にはいかなかった。
どうしても怖くて恥ずかしくて今日まで逃げて来たけれど、とにかく研究室に入らなきゃ、何も始める事が出来ない。
変な緊張で、呼吸する度に肩が上下する。
私はゆっくりノブに手を掛けて、思い切りドアを開けた。
「……こんにちは」
シンと静まった研究室に、人の気配はない。
それに気付いて私はホッとする。
自分でも情けないと思うけど、樫本先生と顔を合わす勇気はまだ無かった。
だから前に聞いた予定通りならば、先生が学会で出張している日を狙って研究室復帰を果たそうとした訳だけど。
誰もいないとなると途端に溜め息が出た。
鍵が開いていたんだから、教授か健太郎はきっとすぐに戻って来る。
だからサボってしまった研究を独りで進めようと考えて、私は自分のロッカーに足を向ける。
チラッと教授の隣りのデスクに目を遣って、樫本先生のパソコンが無い事にもホッとする。
少なくとも今日ここで先生と顔を合わす事はないはずだと思いたい。
白衣を着て、参考文献を探しに書架に入る。
フッと頭上を見上げて、ついこの間落下して来た本が積み上げられているのを見て、それだけで心臓が大きく騒ぎ出すのを感じた。
嫌でもここで起きた事を思い出す。
研究室の前に立ち尽くして、私は大きく深呼吸をした。
いつまでも研究から離れてる訳にはいかない。
ここに来ない訳にもいかない。
樫本先生とどんな顔をして会えばいいのかわからない、なんて、そんな私情で、健太郎に迷惑を掛け続ける訳にはいかなかった。
どうしても怖くて恥ずかしくて今日まで逃げて来たけれど、とにかく研究室に入らなきゃ、何も始める事が出来ない。
変な緊張で、呼吸する度に肩が上下する。
私はゆっくりノブに手を掛けて、思い切りドアを開けた。
「……こんにちは」
シンと静まった研究室に、人の気配はない。
それに気付いて私はホッとする。
自分でも情けないと思うけど、樫本先生と顔を合わす勇気はまだ無かった。
だから前に聞いた予定通りならば、先生が学会で出張している日を狙って研究室復帰を果たそうとした訳だけど。
誰もいないとなると途端に溜め息が出た。
鍵が開いていたんだから、教授か健太郎はきっとすぐに戻って来る。
だからサボってしまった研究を独りで進めようと考えて、私は自分のロッカーに足を向ける。
チラッと教授の隣りのデスクに目を遣って、樫本先生のパソコンが無い事にもホッとする。
少なくとも今日ここで先生と顔を合わす事はないはずだと思いたい。
白衣を着て、参考文献を探しに書架に入る。
フッと頭上を見上げて、ついこの間落下して来た本が積み上げられているのを見て、それだけで心臓が大きく騒ぎ出すのを感じた。
嫌でもここで起きた事を思い出す。