解ける螺旋
その目はやっぱり真剣で、健太郎はこの不可解な感覚を説明出来る何かを掴んだんだってわかる。
だから私も、今まで一人で抱えて来たこの感覚を、健太郎に話す決心をした。


「……私も健太郎と同じよ。
確かに健太郎が言う通り、私の方が混乱が強いかも。
経験してないはずの事が記憶にある。嫌な夢ばかり見る。
……私ね、健太郎の事を好きだったんじゃないかって思える記憶があるの。
おかしいって思われてもいい。
……その。前世とかかな。実は恋人同士だった、とか」


言ってても恥ずかしい。
笑い飛ばして欲しかったのに、健太郎は笑い飛ばす事無く、苦笑した。


「……ロマンチストだな。
俺にそんな気持ち抱えてたんなら、他の男にディープキスなんか許すなって言いたいけど」

「……うう」


そうだよね。そう思うのが普通だ。
樫本先生を拒めずに、ただ受け入れてしまったのがどうしてか。
あの時の私はまだ、先生を好きなのかもしれないって気持ちはなかったはずなのに。


「まあ、それはいいとして。
前世って話になると、一応科学の分野研究してる立場からしたら信じ難いんだけど、ありえるって考えないと進まないから。
でね、お互いに今の感覚の事を話してみた限り、不審に思わないか? それとも不思議か。
一人だけの感覚じゃない。
俺と奈月、二人で同じ、経験してないはずの記憶があるって事」

「うん」

「それから、お互いの気持ちの事。
俺もね、奈月と同じなんだ。
……お前の事好きだった様な気がする。
もしかしたら恋人同士になってたかも、って思える。
だけどそれが現実じゃない事は、俺と奈月が一番よくわかってる」

「……うん」
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