解ける螺旋
同じ返事を繰り返してから、私は隣に座る健太郎を見た。
それに気付いたのか、健太郎は、ん? と首を傾げる。


「だけど。健太郎はなんで気付いたの?
経験してないはずの記憶がある、なんて。
……私はほとんどが曖昧で、夢を見たのかもしれない、って思えば誤魔化せる程度だけど。
昔は危険な事が起こる度に、健太郎が助けてくれたな、とか。
健太郎が覚えてないみたいだったから、思い違いだって考えれば良かったって言うか」


私が最初に感じた違和感の事を打ち明けると、そんな事か、と健太郎は笑った。
手にした缶コーヒーの残りを一気に飲んで、そして足元に缶を置く。
そして少しだけ夕暮れの赤い空に目をやってから、溜め息の様な息を吐いた。


「答えは簡単。だって、現実じゃないんだから。
……お前が何度も殺される記憶だから」


何でもない事の様に淡々と話す健太郎の声に、一瞬ビクッとした。


殺される夢。
私も自分で何度も見た。
そう、何度も、何度も。


そして健太郎ははっきりと言う。
健太郎にとっては夢じゃない。


それは、本当の記憶なんだ。
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