解ける螺旋
確かに樫本先生は、私達と同じエヴェレットの多世界解釈に興味があったと言ってた。
多世界、イコール『もしも』の世界。
同じ時空の並行世界にいる、何人もの『私』
想像してみるのは楽しいけれど、あくまでも理論上の解釈でしかない。
実証出来る論文が発表されてる訳じゃないし、私の多世界を体験出来るのは第三者、つまり観測者のみ。
そして現実に他の世界を体験出来るというなら、垂直世界を移動出来なければいけない。
つまり、教授が言ってたタイムトリップ、時空跳躍が可能でなければいけない。
「信じられない話だろうけどさ。
理論と計算上、時空跳躍も不可能な話じゃない。
限り無く近似値の『量子』が存在する世界、つまり実際に樫本先生本人が生きている時空内での跳躍に限定する。
時間軸と座標を特定してちょっとした実験を重ねれば、どっかの将来で成功してるかもしれないんだから」
私の思考を解く様に健太郎は笑う。
「……健太郎の話だと、樫本先生は未来から来た。
それは決まりなのね」
溜め息混じりに呟くと、健太郎はまあな、と宙に視線を向けた。
「過去から来て、奈月の多世界を幾つも創り上げる意味がわからない。
普通に考えて、先生の本来の時空を変える為に、『過去の奈月』に干渉してるって推論が一番無難だ。
未来からだったら、技術の進歩で夢みたいな時空跳躍も可能になってるかもしれないし」
確かに過去の先生が未来に来て、って言うのは考えにくいけど。
「でもそんな事が可能な未来って。……何年後なんだろ」
私がまだ真剣に信じられないまま首を傾げると、健太郎がザッと暗算した。
多世界、イコール『もしも』の世界。
同じ時空の並行世界にいる、何人もの『私』
想像してみるのは楽しいけれど、あくまでも理論上の解釈でしかない。
実証出来る論文が発表されてる訳じゃないし、私の多世界を体験出来るのは第三者、つまり観測者のみ。
そして現実に他の世界を体験出来るというなら、垂直世界を移動出来なければいけない。
つまり、教授が言ってたタイムトリップ、時空跳躍が可能でなければいけない。
「信じられない話だろうけどさ。
理論と計算上、時空跳躍も不可能な話じゃない。
限り無く近似値の『量子』が存在する世界、つまり実際に樫本先生本人が生きている時空内での跳躍に限定する。
時間軸と座標を特定してちょっとした実験を重ねれば、どっかの将来で成功してるかもしれないんだから」
私の思考を解く様に健太郎は笑う。
「……健太郎の話だと、樫本先生は未来から来た。
それは決まりなのね」
溜め息混じりに呟くと、健太郎はまあな、と宙に視線を向けた。
「過去から来て、奈月の多世界を幾つも創り上げる意味がわからない。
普通に考えて、先生の本来の時空を変える為に、『過去の奈月』に干渉してるって推論が一番無難だ。
未来からだったら、技術の進歩で夢みたいな時空跳躍も可能になってるかもしれないし」
確かに過去の先生が未来に来て、って言うのは考えにくいけど。
「でもそんな事が可能な未来って。……何年後なんだろ」
私がまだ真剣に信じられないまま首を傾げると、健太郎がザッと暗算した。