解ける螺旋
「先生の量子が存在しない時空には跳躍出来ない。
10歳の奈月に干渉出来るからには、この13年前には生まれてないと。
先生は今28歳だろ?
極論だけど、今の時点で高校生って考えがギリギリのデッドライン。
つまり……十数年後?」
「……樫本先生が年下」
あまりに予想外でつい苦笑した。
例えば今の時空で生まれた樫本先生にどこかで出会うことがあれば、樫本先生は私に敬語を使ってたりして、と考えるとさすがに落ち着かない。
「だけど時空跳躍はともかく、仮定して考える方で広がりが持てる事はわかった。
確かに樫本先生ならエヴェレットの多世界解釈にも詳しいはずだし。
でも。……影響って、どういう事?」
健太郎の話は受け止めてるつもりだけど、まだ思考が追い付かない。
「俺とお前の記憶の混濁。
樫本先生が研究室に来てから感じる様になったって、俺は思う。
その原因が、奈月の他の世界を観測して来た先生から受ける影響だとしたら?
人間や物体の持つ量子が、俺達の量子に触れて変化をもたらす。
他の世界で全て起こった出来事。
先生はこの十数年を何度も繰り返してるんだから、量子エネルギーも普通の人の何十倍、何百倍も強力に違いない。
……その上奈月みたいに個人的な接触が強くなれば」
なんだか最後の一言だけ、溜め息混じりに言われた気がする。
「健太郎、あの」
「ちょっと聞いておきたいんだけど。
……奈月、お前さ。樫本先生の事、好きなのか?」
「え!?」
突然の話題転換に、心の準備が遅かった。
私はみっともない位うろたえて、誤魔化す言葉も見つからない。
「付き合ってる……のか?
だから。……それでいいのかな、って」
10歳の奈月に干渉出来るからには、この13年前には生まれてないと。
先生は今28歳だろ?
極論だけど、今の時点で高校生って考えがギリギリのデッドライン。
つまり……十数年後?」
「……樫本先生が年下」
あまりに予想外でつい苦笑した。
例えば今の時空で生まれた樫本先生にどこかで出会うことがあれば、樫本先生は私に敬語を使ってたりして、と考えるとさすがに落ち着かない。
「だけど時空跳躍はともかく、仮定して考える方で広がりが持てる事はわかった。
確かに樫本先生ならエヴェレットの多世界解釈にも詳しいはずだし。
でも。……影響って、どういう事?」
健太郎の話は受け止めてるつもりだけど、まだ思考が追い付かない。
「俺とお前の記憶の混濁。
樫本先生が研究室に来てから感じる様になったって、俺は思う。
その原因が、奈月の他の世界を観測して来た先生から受ける影響だとしたら?
人間や物体の持つ量子が、俺達の量子に触れて変化をもたらす。
他の世界で全て起こった出来事。
先生はこの十数年を何度も繰り返してるんだから、量子エネルギーも普通の人の何十倍、何百倍も強力に違いない。
……その上奈月みたいに個人的な接触が強くなれば」
なんだか最後の一言だけ、溜め息混じりに言われた気がする。
「健太郎、あの」
「ちょっと聞いておきたいんだけど。
……奈月、お前さ。樫本先生の事、好きなのか?」
「え!?」
突然の話題転換に、心の準備が遅かった。
私はみっともない位うろたえて、誤魔化す言葉も見つからない。
「付き合ってる……のか?
だから。……それでいいのかな、って」