解ける螺旋
「何?」

「当然、目的だよ。
時空跳躍が可能かとかよりも、なんで先生は奈月の世界に干渉するのか、が重要だろ?
少なくとも、俺達がまだ幼い頃、周りに居なかったはずだ。
誘拐事件で救出されたお前は、先生の顔を知らなかったんだから」

「あ、そっか。そうだよね……」


私の過去を変える。
そのどこに樫本先生の目的があるのか。


「『他の私』は樫本先生とどんな接点があったんだろ?」


なんだか釈然としなくて、私は首を傾げた。
そんな私を見ながら、健太郎は何かを言いかけて言葉に淀む。 


「……お前さ。平気なの?」

「何が?」


私をジッと見る健太郎を見つめ返す。
健太郎はしばらく私を探るみたいに眺めた後、フッと息を吐いた。


「よく考えてみろよ。
俺の推論が正しければ、樫本先生は何度もお前の世界に干渉してる。
そこで何度も『奈月』と出会って、何度も『奈月』を殺してる」

「……あ……」


眉間に皺を寄せた健太郎にそう言われて、私は息を飲んで黙り込んだ。


『私』は何度も樫本先生に殺されてる。
健太郎の話を信じるなら、他の世界の私が何度も殺されている。


「樫本先生が殺したのは別のお前で今のお前じゃない。
だけど、少なくとも今の『奈月』に危害を加える可能性は十分あるんだ。
それなのになんで冷静に聞いてられる?
信じてないのはわかるけど」
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