解ける螺旋
まるで根気比べみたいだと思った。


先生が私の何を探ろうとしてるのかわからない。
先生の傍から逃げずにいる自分がわからない。
お互いの瞳の中に答えがあるのかすらわからないまま、ただ私達は触れ合いそうな位近くで見つめ合う。


「……君が好きだから、とかいう答えが欲しい?」


口の端だけ歪めて先生は笑う。


私を傷付ける為だけに発した言葉だとわかってる。
だけど私はそんな笑みにも見入っていた。


「嘘でしかないですよね」

「好きだから結城に渡したくなかった。
だからキスしたしセックスもした。
そう言ったら少しは満足する?」

「……悲しいだけの様な気がします」

「じゃあもっと言ってあげよっか。
愛してるよ、奈月。誰にも渡さない。
……泣きたくなった?」

「……」


先生の瞳が少しだけ揺れた。
そこにあの光を見つけて、私は先生の胸にギュッとしがみつく。


私を苦しめるくせに。
冷たい態度で翻弄して、残酷な言葉で私を悲しませるのに。
そうする自分に傷付いて、冷酷になり切れずにいる先生がわかる。


「もっと徹底的に冷酷な人だったら、素直に憎む事が出来るのに。
……なんで中途半端に優しいんですか」


私が放った言葉に、先生が面白そうに微笑んだ。


「優しい? ……俺が?」


心を隠した天使の様な笑顔。
それを最後に目に焼き付けて、私は瞳を閉じた。
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