解ける螺旋
「残念ながら妹は亡くなったよ、病気でね。もう五年以上も前の事だ。
だから君には紹介出来ない。悪いね」


愁夜さんの返事を聞いて、健太郎は少しだけ黙り込んだ。
まさか本当に残念だと思ってるとは思わないけど、健太郎が何のつもりでそんな事を聞くのかわからなかった。


「そっか。すみません。
……で、病気って?」

「……ちょっと、健太郎ってば」


どうしたと言うのか、今日の健太郎は妙に愁夜さんに絡む。
亡くなった妹さんの事なんだし、普段の健太郎ならデリケートな話題を掘り返して聞く様な事は絶対にしないのに。
健太郎を止めながら、その態度に困惑する。


さすがに愁夜さんも少し眉をひそめた。


「……結城君。悪いけどこれ以上は」

「先天性の心疾患ってとこですか」


愁夜さんの言葉を遮ってから、健太郎がサラリと口にした病名に、私もつい反応してしまった。


「……え? それって」

「……」


代わりに愁夜さんが黙り込んだ。
だけど答えなくても、その沈黙は雄弁過ぎる。
そして、健太郎の質問への答えになる。


「やっぱり、か……。
先生、失礼しました。辛い事思い出させましたよね」
< 169 / 301 >

この作品をシェア

pagetop