解ける螺旋
健太郎もその沈黙に意味を感じ取ったのか、ガタンと音を立てて立ち上がる。


「論文のアドバイス、ありがとうございます。
奈月、行くよ」

「え……? 健太郎!?」


まだ黙っている愁夜さんを気にせず、健太郎が私の腕を掴む。


「早く。行くとこあるんだ」

「ちょっ……!」

「……頑張って」


健太郎に抗議の声を上げようとした時、愁夜さんがサラリと言った。
その声の冷たさに、思わず振り返る。
目線を合わせずに宙を見ている愁夜さんの横顔に、ドキッとした。
切り裂かれるかと思う位、鋭い瞳。


「……愁夜さん?」


健太郎に腕を引かれて、半分引き摺られる様に歩き出しながら、無意識に名前を呼んだ。
私の声に、愁夜さんがゆっくりと私に視線を返す。


「愁……。ま、待って、健太郎!」


想いの半分以上を残したまま、私は健太郎の力に逆らえずに、研究室から出た。
< 170 / 301 >

この作品をシェア

pagetop