解ける螺旋
健太郎の言葉に、西谷さんも可愛らしい笑みを浮かべる。


「はい。……今までは私の心配ばかりで。
最近やっと自分の事にも目を向けてくれる様になって、良かったと思ってるんです。
兄も、相沢さんの、あの……ご両親のおかげだっていつも言ってます。
私がパーティーで相沢さんに会ったって言ったら、会いたがってたんですよ。
タイミング悪いな、今日来れたら相沢さんに直接お礼が言えたのに。
今医学実習中で、今回の入院期間はお見舞いに来れないって言ってたから」

「……そんな。私にお礼なんて」


そのお礼を素直に受け取っていいのかわからない。


私が開発した薬じゃないけど、もしかしたら、私が13年前に誘拐されて『あの人』に助けられたからこそ、あの薬が世に生み出されたんだと考えたら。


「……すごくいいお兄さんだね。
医学部に進んだのも妹の為、か」


そう言いながら、健太郎が愁夜さんの事を考えてるのはわかる。


「ちょっと、過保護なんですよね。
だけど薬の治療が上手くいってるからか、やっと最近自分の事も大事にしてくれる様になったみたい。
今までは気付かなかったけど、知らないうちに彼女まで作ってるし。しかも私にもずっと内緒にして」


お兄さんの彼女の存在が複雑なのか、西谷さんは少しだけ唇を尖らせた。


「……いや、多分妹には話し難いと思うよ。照れ臭いんじゃない?」


健太郎がお兄さんに同調して苦笑した。


――それが本当に愁夜さんの事なのか。


聞いてる限り、私にもとても同一人物だと思えない。


「そんなもんですかね。
あの、だけどぜひ紹介したいんで、今度ゆっくり家に遊びに来て下さい!
相沢さんが来てくれたら、兄も喜ぶから。
あ、もしかしたら彼女と別れちゃうかも……」

「あ、あはは。……それは困るな」


本当はすごくドキドキしながら、西谷さんに合わせて無理矢理笑った。
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