解ける螺旋
この状態で仲がいいと言われても。
私と健太郎はなんとなく顔を見合わせて、お互いにそっぽを向いた。


「……まあ、研究員を冷やかすのはこの位にしておこうかな。
それで君達、今日は研究して行く時間はあるのかな?
結城財閥の御子息と相沢夫妻のご息女なら、今夜は大忙しなんじゃない?」


まだクスクスと笑っている樫本先生の言葉に、健太郎が小さく、まあ、と呟いた。
私も同時に肩を竦めた。


「大丈夫です。
ギリギリまで勉強しても、その後は健太郎の家の運転手さんが迎えに来てくれますから。
ちゃんと着替えも用意して運んでもらってあるし、後は本当に着の身着のままで……」


私が返事をすると、健太郎が眉を寄せて私を睨んだ。


「……おい、奈月。
それならどうして今朝遅刻したんだ?
お前は一体何にバタバタしてたんだよ」

「……昨夜寝るの遅くて。ちょっと寝坊」


ほとんど誤魔化し様のない状況に、私は仕方なく本当の事を暴露した。
途端に健太郎が盛大な溜め息をついてくれる。


「お前、バカか!?
おじさん達にとってどれだけ今日が大事な日かはわかってるだろう!?
……あの事件の後、おじさん達はずっとあの研究を続けて来たんだ。
何の為か、誰の為かはお前が一番理解してるはずだろう!?」

「……ごめんなさい」


私以上に両親の事を考えてくれている健太郎の言葉と剣幕に、私は素直にそう言っていた。
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